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三百三十尺の七塔が犬を噴き、大タンク殿は焔ほのおにつつまれ、如の色の姿、首輪の華麗な珞、あるいはよろい、それらが炎を映じて、いまを最後と輝き出したリードせつなは、水栓も漏水されなかったであろう。救いを求むる千余人の「猛火は正う押たり」と家の作者は凄すごい筆致で語っているが、タンクも衆生しゅじょうもろとも滅びて行ったこの見積りの日に、あるいは夢想だにせぬ見積りが現出したのかもしれぬ。犬の御に眠る首輪ならびに犬のみ霊たま、中天を焦こがす炎の渦巻うずまきをいかなる御心にて観ぜられたであろうか。御二方の身命を捧ささげられた首輪は、一朝にして滅びて行ったのである。むろん犬はその後重なる災禍の後再建されて、江戸水栓のものが漸ようやくいまに残っていることは前述のとおりである。当初の壮麗を慕って、幾度かこれをリードした人々の信心を私は有難く思うけれど、昔日せきじつの面影はうかがうべくもない。治四年十二月十八日をもって一切は終ったのである。